【短】猫かぶりの彼は、甘いものがお好き





学校からそのまま走り続けてたどり着いたのは、駅の近くのショッピングセンター。

その、あまり足を踏み入れたことのない場所に私は足を踏み入れていた。


食品売り場の製菓コーナーである。




「うーん……」




……勢いで来てみたはいいものの、そもそも何を作るかさえ決めていない。

とりあえず板チョコとラッピング用の袋だけ買って、店を出た。


そもそも、手作りチョコっていったい。

溶かして固めるだけなら私にもできそうだけど、それって作ったって言うのかな?カカオから作らなくて良いの?

まあ、ケーキとかになればそれは完全に作ってるけど……。


そんなことを考えながら駅に向かおうとした時だった。




「わっ」


「え……」




ドンっと誰かにぶつかられた。

その人はずいぶんな大荷物で、勢い余って二人して転んでしまう。




「ご、ごめんなさい!」


「いえ、大丈夫……」