「浩斗くん、今日もレナさんの手伝い?」
「うん。今夜は姉さんのところに泊まる羽目になりそう」
「じゃあ、あとでご飯届けるね」
「ありがとう。……甘い匂いするけど、今は何作ってるの?」
「ザッハトルテ……チョコレートケーキの一種みたいな。明日バレンタインだから浩斗くんに渡そうと思って」
「……それ、今聞いて大丈夫だった?」
「え……待って言っちゃった!わ、忘れて!」
「あ、えっと……努力します」
……聞いていると、何ともゆるふわした微笑ましい会話が繰り広げられている。
これはさすがにお邪魔だよなあ……と思った私は、いそいそと荷物をまとめ、そっと声をかけた。
「在花さん。今日まですっごくお世話になりました。私はこれで……」
「あ、待って葉澄ちゃん」
こっそり立ち去る気でいたのに、在花さんは私を呼び留めた。
仕方なく振り返ると、在花さんの隣の浩斗さんとも目が合ってしまった。やっぱり冷たくて怖い。さっきのゆるふわどこにいった??



