【短】猫かぶりの彼は、甘いものがお好き




一言で表現すれば、氷。

目付きが鋭くて、私は親の仇なのかと思うほど睨まれた。一瞬、本気で背筋が凍り付く心地がした。


だけどすぐに、在花さんが穏やかな声で言った。




「あ、この子は最近知り合った葉澄ちゃん。一緒にお菓子作りの練習してるの。……葉澄ちゃん、彼は……私の彼氏の遠坂(とおさか)浩斗(ひろと)くん。この部屋の隣に住んでる漫画家さんの弟で、お姉さんの手伝いのためによくこのアパートに出入りしてるの」


「えっと、こんにちは」


「……どうも」


「浩斗くんは人見知りってだけで、睨んでるわけじゃないから気にしないでね!」




まさかの人見知り王子だった。

それにしても、その目は人見知りというより殺し屋のようなのだけど……。

だけどその目も、在花さんに向けられた瞬間、嘘のように優しくなる。


彼──浩斗さんにとって、在花さんはすごく特別な存在だということが、ひしひしと伝わってきた。