【短】猫かぶりの彼は、甘いものがお好き




そうお悩みを話してくれたからだ。

その時の在花さんが本当に可愛かった。恋する乙女はやっぱり可愛い。

彼氏さんがどんな人なのかも気になるところ。ぜひとも会ってみたい。




──そして、そんな希望が叶ったのは、練習最終日の今日。

つまり、バレンタイン前日のことだった。


それは、私が無事に明日持っていくチョコを完成させ、在花さんがザッハトルテを作り始めた(ちなみに、ザッハトルテなるものを初めて聞いた私は、調べてみて絶句した。普通これ作ろうと思わない)ときのこと。



ピンポーン、とインターホンの音が鳴り響いた。

玄関を確認に行った在花さんは、そのまま訪問者を連れて戻ってきた。



住沢高校の制服を着た、長めの黒髪が印象的な美男子。

とても優しい表情で、在花さんと何かを話している。



こっそりのぞきながら、なるほどこの人が彼氏さん……確かに王子だ……と納得した。

はずだったのだけど……

彼の表情は、台所にいる私に気付いて豹変した。