私は、先ほど買ったばかりの製菓用板チョコの入った袋に目をやる。
……まさか、手作りのお菓子はこのレベルを求められていたなんて。
しばらくフリーズしていた私は、やがて姿勢を正して在花さんの方に向き直った。
「在花さん。……私を弟子にしてください」
「で、弟子?」
「バレンタインに渡すお菓子を、どうしても作りたいんです!」
完全に戸惑っている在花さんに、私は、まだ付き合い始めて日が浅い彼氏がいること、友達からバレンタインには手作りチョコを渡すべきだと指摘されたこと、だけど料理には全くもって自信がないこと……などを話した。
話し終えると、在花さんは静かにうなずく。そして私の手を握った。
「……わかった。お菓子作りの特訓、私で良ければ引き受けるよ」
「わ、本当ですか!」
「私もバレンタインのお菓子はどうしようか考えてるところだったの。……葉澄ちゃん。初めてのバレンタイン、お互い絶対に成功させようね」



