おー、哀の毒舌は健全だ。
これは従うしかないよ。
「桜羽さんは相当な方向音痴みたいだし、そのまま迷子になられても困るよ。ただ案内するだけなら、全然迷惑じゃないから大丈夫」
「え、えっと。お、お願いします」
「ん、じゃあ、行こうか」
―――そう言って、2人が出ていったその時。
「女嫌いの伊織が……」
「珍しい」
「うわ、意外すぎるんだけどー」
「まぁ、これで迷わないでしょ」
俺達は驚きから口々にそんなことを呟いていた。
*
もういないけど、さっきまでいた扉を見つめた。
あんな女は初めて見た。
俺達の縄張りに勝手に踏み入れて、しかもその理由が迷子とか。
そう言われた時は驚き以上に面白くてたまらなかった。
だって、事務所行こうとしてここにたどり着いたんだよ?
事務所は本館で、ここは別館。
どれだけ方向音痴なんだよーって話。


