地味子ちゃんはイケメン男子に寵愛されて



おー、哀の毒舌は健全だ。


これは従うしかないよ。


「桜羽さんは相当な方向音痴みたいだし、そのまま迷子になられても困るよ。ただ案内するだけなら、全然迷惑じゃないから大丈夫」


「え、えっと。お、お願いします」


「ん、じゃあ、行こうか」


―――そう言って、2人が出ていったその時。


「女嫌いの伊織が……」


「珍しい」


「うわ、意外すぎるんだけどー」


「まぁ、これで迷わないでしょ」


俺達は驚きから口々にそんなことを呟いていた。





もういないけど、さっきまでいた扉を見つめた。


あんな女は初めて見た。


俺達の縄張りに勝手に踏み入れて、しかもその理由が迷子とか。


そう言われた時は驚き以上に面白くてたまらなかった。


だって、事務所行こうとしてここにたどり着いたんだよ?


事務所は本館で、ここは別館。


どれだけ方向音痴なんだよーって話。