「ヘラへ…じゃない、えっと、りょうさん!」

えっ?と山下は驚いたように振り返る。

「ああ、誰かと思ったら君か」

小雪は、タタッと駆け寄った。

「こんにちは。あの、りょうさんも会議に出席されるんですか?」

その時、少し離れた所で立ち止まっていた男性二人が、声をかけてきた。

「おーい、先に行ってるぞ」
「あ、はい」

小雪は、慌てて頭を下げる。

「す、すみません。ご一緒の方がいらしたんですね。もしかして、上司の方ですか?」
「気にする事ないよ。課長と課長補佐だけど、気心知れてるし」
「えっ、か、課長?!それはランクの高い方ですよね?」

山下は、ぶっと吹き出す。

「ははは!そうそう、君の言うカタギの世界のね」
「りょうさんは、どのランクなんですか?」
「ランクね、俺は係長」
「係長?!それもまた、なかなかの強者じゃないですか」
「あはは!いやー、まだまだ経験値も足りないし、このままだとラスボスには立ち向かえないなー」

山下は笑ってそう言ったが、小雪は真剣に頷いている。

「大変ですね、カタギの世界って」
「ククッ、まあね。それより、足の具合はどう?」
「はい。お陰様でもうすっかり…。あ、そうだ!」