「足の具合はどう?今日も休んでると思ったのに、瑠璃ちゃんが出勤して来たから、もしやと思って見に来たんだ」
「あ、はい。昨日ゆっくり休んだので、もう普通に歩けるようになりました」
「そう?ちょっと見せて」

山下は、小雪が伸ばした右足にそっと手を添えて確かめる。

「うん、腫れも引いてるね。でもまだ無理はしないように。走ったりしゃがんだりしちゃだめだよ」

はい、と小雪が頷くと、じっと様子をうかがっていたすみれが遠慮がちに聞いてくる。

「りょうおにいさん、おいしゃさまなの?」
「ん?あはは!違うよ、すみれちゃん。りょうお兄ちゃんはね、明るく愉快なみんなの人気者なんだよ」

すみれと小雪は、シーン…と静まり返る。

んんっ!と咳払いすると、山下はバツが悪そうに立ち上がった。

「じゃあ、またね。お大事に」

そしてトボトボと部屋を出て行った。

すみれと小雪は、気を取り直してお絵描きに戻る。

すると、ふと手を止めてすみれが呟いた。

「あかるくゆかいなにんきもの…」
「す、すみれちゃん?そこはあんまり気にしなくてもいいのよ?」

小雪が思わず真顔ですみれに言う。

すみれはまたクレヨンで絵を描き始めると、できた!と小雪に見せる。

そこには、大きな口を開けてニッコリ笑う、山下にそっくりな顔が描かれていた。