「はー、マジで苦しかった…」

ふうと息を吐き出すと、しみじみと小雪に言う。

「保育士さんって、みんなそんなにおもしろいの?それとも君だけ変わってるの?」
「え?私、変わってませんよ。みんなこんな感じです」

ふうん…?と、山下は疑わしそうな返事をする。

「それを言うなら、営業マンの方だって、みんなそんなにヘラ…」

思わず、ヘラヘラ星人かと聞きそうになって、慌てて口をつぐむ。

「ん?なに?」
「いえ、何でもないです」

山下は少し首をかしげてから、さてと、と立ち上がった。

「じゃあ、俺はそろそろ帰るね。あ、明日の仕事は?入ってるの?」
「あ、それが、さっき会社からメールが来て。美和先生から聞きました、明日のシフトは外しましたのでお大事にって」
「さっきの先生、連絡してくれたんだ。良かったね。じゃあ、残りのお弁当は冷蔵庫に入れておいたから、明日はゆっくりしてね」

そう言って今度こそ、玄関を出て行く。

外からカチャリと鍵をかけると、ドアポケットのすき間から、お大事にねーと声をかけながら鍵をポトッと入れて帰って行った。