魔法のいらないシンデレラ 3

「ゆっくりね、よいしょっと。大丈夫?」
「あ、はい。大丈夫です」

ベッドに腰を落ち着け、小雪はふうとひと息つく。

クリニックからまたタクシーに乗り、家まで送ると言う山下に、小雪は何度も、一人で平気ですと断った。

だが、アパートの2階に住んでいると話すと、階段上がれないでしょ?と、結局自宅まで付き添ってもらうことになった。

「あの、本当にありがとうございました。あ、今タクシー代お渡ししますね」

鞄から財布を取り出すと、山下は手で遮った。

「いいって、それくらい。ケガ人なんだから、遠慮しないで」
「でも…すごく高くなっちゃいましたよね?」
「だから、いいの!それに…」

そう言って山下は、わざと低い声を出す。

「人の厚意を、金で買っちゃいけないぜ?お嬢さん。ここは男にカッコつけさせてくれよ」
「……………」

小雪は、なんとも言えない表情で苦笑いする。

「やべ…俺、心折れたかも」

先生んとこ、戻ろうかな…と呟く山下に、小雪は慌てて取り繕う。

「あ、と、とにかく、ありがとうございました」
「とにかくね…ハハ」

力なく笑ってから、山下はローテーブルにレジ袋を置いた。