その後も、ひたすら窓の外を眺めて興奮していたすみれだったが、車内販売のお姉さんからアイスクリームを受け取ると、とたんに目を輝かせた。

「とうさま!アイスクリーム、たべてもいいの?」
「ああ、もちろん。新幹線で食べるアイスクリームは特別おいしいよ」

嬉しそうにアイスクリームを食べ、また窓から見える景色に夢中になる。

そんなすみれを、一生と瑠璃が微笑みながら見守っていると、あっという間に京都に到着した。

駅からすぐの『ホテル 高坂(こうさか) 京都』にチェックインする。

案内された部屋に1歩入ると、瑠璃と一生は驚いて足を止めた。

「い、一生さん。こ、このお部屋は…?」

予約したデラックスダブルの部屋とはほど遠く、広々とした豪華なその部屋は、おそらくスイートルーム。

「…バレたか」

一生は顔をしかめた。

「ネットで普通に予約したんだけどなあ。名前で気付くとは、さすがホテル 高坂のスタッフだな」
「いいのでしょうか?こんな豪華なお部屋…」
「うん、まあ仕方ない。ご厚意を有り難く受け取ろう。後日、高坂会長にお礼をしておくよ」

そして一生は、心配そうにこちらの様子をうかがっているすみれに笑いかける。

「すみれ、このお部屋に泊まるんだぞ。広いなー。よし!早速探検しよう!」
「いいの?うん!たんけんする!」

次々とドアを開けては、はしゃいだ声を上げるすみれと一生に、瑠璃も嬉しそうに笑った。