「悔やんでも悔みきれなかった。君が故郷に帰る事が分かっていたのに、なぜ俺は引き止めなかったんだって。こんなにも後悔する事になるとは…って、毎日辛かった。だから昨日、偶然君と再会出来て、もう絶対手放さないって心に決めたんだ」

山下に見つめられ、小雪は少し視線を落としてから話し出す。

「私は、ずっと夢を見ていた気がしてたんです。憧れの東京っていうお城で、夢みたいな時間を過ごせて…。でもそれは現実の世界じゃない。私はここで暮らしていくんだって。魔法使いは、現れないんだからって」

でも!と小雪は顔を上げて山下を見る。

「魔法使いはいなくても、王子様が迎えに来てくれたの!素敵な王子様が、また東京に連れ戻してくれる。だから、絶対私は幸せになる!今はもう、嬉しさでいっぱいです」

山下は、優しい眼差しを小雪に向ける。

「魔法使いじゃなく、天使のおかげだな。すみれちゃんと蓮くんっていう、恋のキューピッドの」
「ふふ、そうですね。でも私、これからは何か手がかりを置いて行くようにしますね。ガラスの靴じゃなくて、なんかこう、謎解きのヒントになるような」
「…はあ?なんでそうなるのさ」

山下は、半泣きの表情になる。

「もう絶対、俺のそばからいなくなるな」

小雪を抱きしめ、分かった?と真剣に顔を覗き込むと、小雪は赤くなって頷いた。

山下は、ふっと微笑んでから、そっと小雪の頬に手を添えて、優しくキスをした。