魔法のいらないシンデレラ 3

「もしもし、突然申し訳ありません。私、小雪先生が働いていらした、ホテル フォルトゥーナ東京の営業部にいる、山下と申します。小雪先生には、いつも当ホテルのナーサリーに来て頂き、大変お世話になっておりました。今日、偶然ホテルで小雪先生をお見かけし、声をかけた拍子に、転んでケガをさせてしまいました。本当に申し訳ありません。明日、私が責任を持って小雪先生をご自宅まで送り届けます。何卒よろしくお願い致します。それでは、失礼致します」

そしてスマートフォンをタップして通話を終えると、はい、と小雪に返してくる。

「りょ、稜さん、な、なにを…」

小雪が口をパクパクさせていると、山下は、「飛行機、変更可能なチケットなの?」と聞いてくる。

「え、飛行機?あ、はい。確か大丈夫です」
「ふーん、それじゃあ何時がいいかな?」

そう言ってスマートフォンで時刻表を調べる。

「午前中がいいよね。あ、これなら結構空きがある。この便でいい?」

小雪は、見せられた画面を良く確認もせず、うんうんと頷いた。

「じゃあ、君の飛行機もこの便に変更して」
「は、はい」

小雪はいつの間にか他の事を考えるのを忘れて、変更手続きに集中していた。