魔法のいらないシンデレラ 3

危ないよ、と言って山下は小雪の手からカップを取り、テーブルに置いた。

「ほら、早く電話して」
「え、で、でも…」
「大丈夫だから」

山下が頷くと、小雪は仕方なくスマートフォンを手にする。

「あ、お母さん?うん、私。え、今?あの、それがね、実は東京に来ていて」

次の瞬間、えー?!東京?という声が、山下にも聞こえてきた。

「うん、そうなの。何も言わずにごめんなさい。どうしても、担当していた子ども達のことが気になって、以前働いてたホテルに行ったの。そしたら、思いがけず転んで捻挫しちゃって、帰りの飛行機にも間に合いそうになくて…。だから、今日は東京に泊まって、明日帰るね。うん、大丈夫。お父さんにも伝えておいてね」

じゃあね、と言って小雪が電話を切ろうとした時だった。

ちょっと貸して、と言って、山下が横から手を伸ばしてきた。