「…山下さん?」

瑠璃に呼ばれて、ハッと山下は我に返る。

「あの、大丈夫ですか?」

山下は、目に浮かんでいた涙を慌てて拭うと笑顔を作る。

「何でもないよ、ごめん」

そう言って封筒に手紙を戻し、瑠璃に差し出した。

「ありがとう」
「いえ…」

受け取りながら、瑠璃は考える。

(こんな切ない表情の山下さん、初めて。このままでいいのかしら?)

かと言って、どうすればいいのかも思い付かない。

(なんとかしたいのに…。せめて小雪先生の連絡先が分かれば)

だが、手紙に差出人の住所を書かなかったところをみると、おそらく小雪は、こちらからの連絡を望んでいないのだろう。

(では、美和先生に伝言を頼むとか?でもそれも、どうなのだろう…)

瑠璃が黙って考え込んでいると、山下の明るい声がした。

「ごめんね!瑠璃ちゃん、ありがとう。さ、仕事に戻ろう」

瑠璃は、仕方なく頷いて山下と部屋に戻った。