「わっ!に、握ってくれた!」
「ふふっ、山下さんの声、覚えてたのかしら」

すると、周りにいた青木や若い後輩達も声をかける。

「おい、山下。何をほっぺた赤らめてるんだ?恋する乙女か?」
「そんなに赤ちゃん好きなら、山下さんも早く結婚したらどうですか?いいパパになりそうですよ」

それを聞いて、加藤が後輩の肩に手を置いて言う。

「それがなー、こいつこう見えて、彼女なかなか出来ないんだよ」
「え、そうなんですか?なんか意外ですね」
「だろー?ノリは軽いのに、押しが弱くてさ。照れ屋なのは、企画広報課の課長の伝統芸だな」

そう言ってアハハ!と笑う加藤を、青木が羽交い締めにする。

「おい加藤。いいのか?そんな口きいて。これからも長い付き合いだからな、ネチネチいじってやるぞ?」
「わー、すみません!これからも、尊敬する青木さんについていきますからー」