「私、本当に情けなくて…。7月の時も先日も、稜さんに散々ご迷惑おかけしたのに覚えてなくて…」

そしてポツポツと、いきさつを話し始めた。

先日、故郷の山口県から幼馴染みが上京して来て、あの居酒屋に一緒に行ったこと。

途中から記憶が失くなり、気付けばアパートのベッドで寝ていたこと。

テーブルに山下のメモを見つけ、驚いて幼馴染みに電話をかけて、何があったのか教えてもらったこと。

そしてドアポケットの中の鍵を見て、もしかして7月も同じようなことがあったのではないかと思ったこと。

「今まで気付きもしないで、本当にすみませんでした」
「ううん、本当に気にしなくていいよ。だからそんなに落ち込まないで、ね?」