瑠璃は、そっと花に顔を寄せてしみじみと呟く。

「神秘的なお花よね。それに、泥水を吸ってこんなに綺麗な花を咲かせるなんて。私、蓮の花を見ると、色んな事を教えられているような気がするの」
「うん、確かにそうだね。この花にはそんな魅力がある」

しばらく花を眺めていた一生は、急に顔を上げて瑠璃を見た。

「ねえ、瑠璃。赤ちゃんの名前、『れん』はどう?」
「れん?どういう字を書くの?」
「これだよ」

一生は、蓮の花を指差す。

「あっ!」

瑠璃は、ハッとしたように一生を見つめた。

「この花のように、どんな困難も乗り越えて人生を輝かせて欲しい」
「そうね。それに、連なって実をつけるこの花のように、人との繋がりも大切にして欲しい」

二人は笑顔で頷くと、赤ちゃんに呼びかけた。

(れん)

すると、呼びかけに答えるようにパチっと目を開ける。

「え?もしかして、答えてくれた?」
「そうよね、名前を呼んだら急に目を開けたわよね」

一生と瑠璃は、驚きつつも嬉しくなる。

「お名前、気に入ってくれた?蓮」
「元気に大きくなるんだぞ、蓮」

蓮は返事をするように、手足をバタバタさせていた。