「あれは課長がポロッとね。普通の会議では、あんな事は起こらないよ」
「そっか。私、もうトレンディドラマかと思いましたよ。こうやってオフィスラブは生まれるのか!って」
「…小雪ちゃんも、実はちょくちょく言い回し古いよね?」
「えー?そんな事ないですよ。それより、課長さん。あれからどうなったんですか?」

山下は、ちょっともったいぶった後、指で丸を作る。

「上手くいったんですか?!わー、素敵!キュンキュンしちゃう!」
「ははっ、キュンキュンね」
「あ、と言うことは…。稜さんもレベルアップ出来ますね!」
「ん?ああ、昇進ね。そうだね、期待しておこう」

小雪は笑顔で頷いてから、そうそう…と自分の鞄の中を探る。

「私、次回のミーティングまでに用意したい資料があって…。稜さん、見て頂けませんか?」
「いいよ、どれ?」
「まだ途中なんですけど、こんな情報、役に立ちますかね?」

山下は、小雪から受け取ったホチキス止めの紙をめくってみる。

「へえー、なるほど」

そして、ふと腕時計に目を落とす。

小雪は、あっと声を洩らした。

「すみません!稜さん、まだお仕事中でしたよね?」
「うん。でもこれ、じっくり見てみたいから、定時で上がった後もう一度見せてもらってもいい?小雪ちゃんは、もう帰っちゃうの?」
「いえ、なんだかんだやる事はたくさんあるので、5時までここにいます」
「そう?そしたら俺、後でもう一度来るよ。待っててくれる?」
「はい!よろしくお願いします」

山下は、じゃあ後で、と手を挙げて出て行った。