私に向けているものじゃないのかもしれない。

 それでも、心臓が高鳴って……壊れそうだった。

 先輩のことをもっと知りたい、仲良くなりたい。

 ……って、卒業間近なのに考えてしまう。

 これから私は、先輩に会いに行く。

 平静を保っていられる自信なんて、あるわけない。

 だけど……これは私の、試練だと思う。

 どんな結果になっても、受け止めなきゃ。



「はい、ピース!」

 卒業式は滞りなく進み、卒業生は涙ながらもはにかんでいる。

 石碑の前で写真を撮ったり、在校生と話していたり。

 茉優ちゃんや千代河君も、多分どこかで卒業生と話しているんだろう。

 心の隅でそう思いながら、屋上への階段を駆け上がる。

 急いでいるわけでもないのに、足が自然と早くなる。

 それと比例して、心臓のうるささも増していた。

 最近はずっと、先輩を避けていた。どんな顔して合えばいいか、分からない。

 目は合わせられないと思う。いろんな感情が混じって、今すぐにでも立ち止まってしまいそうだった。