もちろん驚いたし、逃げてきちゃったけど……やっぱり好きな人に触れられると、嬉しい。

 どういう理由で先輩は、私を抱きしめたんだろう……?

 直接聞かない事には、分からないけど。

 机の上のリナリアが少しだけ、私を見守ってくれている気がした。

 まるで……「心配しないで。」と言っているように。



 だけど気まずさが消えるわけじゃなくて、私はその日から先輩を避けに避けまくっていた。

 避けている、というよりかは、会っていないって言ったほうが正しいのかもしれないけど……。

 先輩も私に会わないようにしているのか、ここ最近先輩の姿を見ていない。

「何で片桐先輩、最近来ないんだろ。葉月、何か知ってるでしょ。」

「っ……な、何の事?」

「とぼけないで。それ絶対知ってるやつじゃん。」

「うっ……。」

 卒業式が明日に迫ったある日、茉優ちゃんにそう言われた。

 多分、茉優ちゃんは私のことを心配してくれてるんだと思う。

 茉優ちゃん自身も、気になってる様子だし……。

 茉優ちゃんの言葉にあからさまに反応してしまい、言い逃れできない状況になる。