甘くて優しい青春恋物語 ~ビターでほろ焦れな恋は溺れるほどの愛で~

 ……っ。

 懸命な小森さんの声。

 それでやっと、僕の自制が利き始めた。

 僕は……何をやっているんだ。

 数秒前の自分を殴りたくなる衝動に駆られ、急いで小森さんを解放する。

 当たり前だけど、小森さんは僕と目を合わせようとしない。

 そりゃそうだ。僕は馬鹿な事をしてしまったんだから。

「きょ、今日は付き合ってくださりありがとうございました……っ。し、失礼しますっ……!」

 目を合わせないまま、会釈をして踵を返した小森さん。

 小さな背中が見えなくなってから僕は、その場に座り込んでしまった。

 馬鹿、馬鹿だ僕……。自制、利かさなきゃならないのに……っ。

「これからどうすれば……。」

 ここを我慢すれば、晴れやかな気持ちで返事ができたのに。

 小森さんに同じ言葉を、返せたのに。

 自分の一つの過ちで、どれだけ盲目になっているかが分かる。

 絶対嫌われた、よね……。

 少しずつ沈みゆく夕日をぼんやり眺めながら、僕は一つ息を吐いた。



「理仁、僕やっちゃった……。」