甘くて優しい青春恋物語 ~ビターでほろ焦れな恋は溺れるほどの愛で~

 少しだけ頬が熱くなる感じがして、だけど茉優ちゃんの言葉にしっかりと答えた。

 茉優ちゃんが言っている、返事。

 それを指すのは、先月のバレンタインの出来事。



 バレンタインの日。

 私はいつもより少し早めに、学校に登校していた。

 まだ人気が少ない、シーンとした校舎を歩く。

 そのまま私は、三年生の教室へと向かっていった。

「……颯斗先輩、いますか?」

 そうやって呼ぶ声は、思ったよりも小さくて。

 届いているか不安だったけど、彼はちゃんと私のほうを見てくれた。

「小森さん、おはよう。どうしたの?」

 私のほうに、不思議そうな表情をしながら駆け寄ってきてくれる彼。

 私は少しだけ躊躇いながらも、言わなきゃと自分に喝を入れ口にした。

「せ、先輩っ……少しだけ、私に付き合ってくれませんかっ?」



 片桐颯斗(かたぎりはやと)先輩。

 私より二個上で、この学校の王子様的存在。

 誰からも羨望の眼差しを一心に受けていて、誰もかれもが先輩の虜。

 ……それは私も、例外ではなかった。