甘くて優しい青春恋物語 ~ビターでほろ焦れな恋は溺れるほどの愛で~

 先輩から遠ざかるように、声がしたほうに顔を向ける。

 その途端、目の前に勢いよくある女の子が見えた。

「久しぶりはづきんっ! 元気にしてた?」

「香ちゃん、久しぶりだねっ。……というか、少し背伸びた……?」

「さっすが! そうなの、二センチ伸びたんだ~!」

 嬉しそうに微笑んでいるこの子は、私の従姉妹の香ちゃん。

 香ちゃんは私とは別の高校に通っていて、滅多に会わない。

 こんなところで会えるなんて……。

 私もつい嬉しくなり、微笑みを返す。

 すると香ちゃんは、私の隣に立っている颯斗先輩に視線を動かした。

「……はづきん、この人誰?」

 香ちゃんの目の色が変わった。

 私たちは従姉妹であるから、こういうところが似る。

 私は男の人が苦手だけど、香ちゃんは嫌い……らしい。

 ある人を除いては、らしいけど……。

 明らかに警戒態勢に入った香ちゃんに、慌てて先輩を紹介する。

「こ、この人はねっ、私の先輩の片桐颯斗先輩。先輩もお花が好きだから、このフェスタに一緒に来たんだ。」