甘くて優しい青春恋物語 ~ビターでほろ焦れな恋は溺れるほどの愛で~

 近くで見ると、より綺麗……。

 遠くからは可愛らしいお花としての認識しかできなかったけど、こうして近くまで持ってきてみると、美しさと可愛らしさが兼ね備わったお花のようだった。

 家に帰ったら、花瓶に入れなくちゃ。

 花瓶に入ったリナリアを想像し、無意識に微笑む。

「……可愛い。」

「…………っ、へっ?」

「小森さん、可愛いよ。」

「ふぇっ……!?」

 か、可愛いっ……!?

 先輩から発せられた言葉に、瞬きを繰り返す。

 いや、きっとリナリアに対して……と考えるけど、しっかり私の名前を呼んでいた。

 しかも、二度も。

 まさかそう言われるなんて微塵も思っておらず、思わず固まってしまう。

「小森さん?」

 先輩は、私の変化に気付いてこっちに近付いてくる。

 ま、待って……! そんな急に、近くに来られたら……っ。

「あれ、はづきんじゃん!」

「……へ? 香、ちゃん……?」

 背後から聞こえた、元気の良い可愛い声。

 聞き慣れた声が飛んできて、私はその声の主に感謝した。