甘くて優しい青春恋物語 ~ビターでほろ焦れな恋は溺れるほどの愛で~

 今みたいに、こんな感じで礼儀が正しいから。

 悪い人に騙されそうになっても、気付かなさそう……。

 変な壺とか詐欺とか、引っかかっちゃいそう……。

 先輩の気持ちは嬉しいけど、そこまでしてもらうほどの仲じゃ……仲、なのだろうか。

 先輩の部活がない日はほとんど家の近くまで送ってもらっちゃってるし、こうして二人で放課後にお出かけする事だって珍しくは……ない。

 それだとしても、私は納得がいかないけど……。

 そう思ってもう一度、きちんと断ろうと下げていた顔を上げる。

「……ダメ、かな。」

 っ……。

 懇願、という言葉が似合う先輩の不安がかっている表情。

 今にも泣きだしてしまいそうで、やっぱり可愛いなんて考えてしまった。

 こういう時にそんな顔されたら……断れ、ない。

「だ、ダメじゃ、ないです……。」

「! 良かった……。ありがとう、小森さん。」

「こ、こちらこそ、ありがとうございます……。」

 結局私が折れてしまう流れになり、先輩からリナリアを受け取る。