甘くて優しい青春恋物語 ~ビターでほろ焦れな恋は溺れるほどの愛で~

 本当は、欲しいけど……我慢しなきゃ。

 他にもいろんなお花がある事だし、ちゃんと見て回らなきゃ。

「小森さん、これ気になってたでしょ。」

「え……?」

 諦めて、踵を返そうとした時。

 先輩の柔らかな声に導かれて、振り返る。

 ……先輩の手には、いくつかのリナリアが収まっていた。

 私にリナリアを差し出したまま、ニコッと笑っている先輩。

 どういう事なのかが分からず、あたふたとしてしまう。

 そんな私の心情を察したのか、先輩はゆっくりと優しい笑みで教えてくれた。

「これ、小森さんが凄く気にいってる感じだったから……手元に置いといたほうが良いんじゃないかって、思って。僕からのプレゼントとして、受け取ってくれないかな。今日付き合ってくれたお礼に。」

「え……そんな、悪いですよっ……!」

 貰うなんて、できない。

 先輩のお金だし、そう言われても貰いづらい。

 先輩は優しいが故に、こういうお人好しで真面目な部分もある。

 だから先輩だけど、危なっかしいと心配に思ってしまう時があるんだ。