ダンス中に、来賓席に座る姫香と桐生先輩の姿がチラチラと視界の端に入ってくることで気が散っていた僕。

きっと、琴乃はそこまでは気づいていなかったのだろうけど…。

『私、頼りないかもだし、侑也くんが私のこと嫌いだとしても…ペアとしてできる限りサポートするつもりだから少しは…頼ってよ?』

と、彼女が話しかけてくれたことで気が紛れた。

ダンスも十分合格点だったしね。

明日、今回のダンスパーティーでの評価が学内掲示板で発表される予定だけど、おそらく良い線いくのではないかと内心感じている。

本当、頑張らないといけないのは僕の方だよ。

チラリとソファで寛いでいたはずの琴乃に視線をむけると、どうやら眠ってしまったらしく、スースーと規則正しい寝息が聞こえてくる。

「ドレス着たまま寝るかな普通…っと!」

ソファ近くまで歩み寄り、僕は彼女を起こさないように抱きかかえ、寝室までゆっくりと運んだ。

ムニャムニャと、あどけない寝顔を見た瞬間、トクンと胸が高鳴るのを感じ、思わず小さくため息をこぼす。

認めたくないけれど、彼女に惹かれているのもまた事実のようで…。

…今更だけど、気持ちを自覚したらこの生活ってほぼ拷問だよな。


再度、今度は大きなため息をこぼし、僕は琴乃の部屋を後にしたのだった。