「…あ。そうでしたっけ?すみません、忘れてました」

「西園寺さん…!私達せっかくお友達になりましたのに…」 

そう言ってショックをうける菖蒲池さん。

私はそんな彼女に気づかれないよう小さくため息をこぼした。

実は、なぜかあのランクアップ事件の後、私は菖蒲池さんに気に入られてしまったようで。

「西園寺さん、先ほどの所作素晴らしかったですわ」

特別授業が終わり、ひとり教室に戻ろうと廊下を歩いている私に菖蒲池さんが駆け寄ってきた。

「えっと…ありがとうございます…。菖蒲池さんこそすばらしかったです。私なんかまだまだまで…」

「いえ!そんなことないです。私、今までこんなに他人のことを素直にすごいと思ったことありませんの…!あ、あのぜひ私とお友達になってくださらない?」
 
頬を染めて、私に向かってそう言い放った彼女は緊張しているのか少しだけ肩を震わせている。

…と、友達?

突然の申し出に一瞬、呆気にとられてしまう私だったが。

「え、えぇ。私で良ければ…」

友達くらいならと安易に頷いてしまったのが災いしたみたいだ。

その日から。

「西園寺さーん、お待ちになって〜」

学校にいる間、菖蒲池さんは半ストーカーのように私に付きまとうようになってしまい…。

「純連様、お待ちください…!」

ペアである本郷くんもセットで関わりが増えたというわけ。

まぁ、学級委員の彼女のおかげでクラスでも孤立することなく、平穏に過ごせているからありがたいのだが。