問題は、普通の庶民代表のような私がなぜ、名門私立櫻乃学園に通う羽目になってしまったのか…。

それを説明するにはまず昨日の出来事から話さなければならない。


―――…


『はぁ!?友達の連帯保証人になって、その人が夜逃げしたから代わりにお母さんが借金返済しないといけない!?…しかも、一千万って…』

…終わった。

自宅のリビングで私のそんな悲痛な叫びが響いた。

日曜日の午前中。

私は優雅に学校の休みを楽しんでいたはずなのに…なんで、こんな恐ろしい話を聞かされてるのか。

いまだに整理がつかず、顔面蒼白でオロオロする私をよそに。

『琴乃ちゃん、そんな大きな声で叫ばないでよ〜。お母さんだって…わざとじゃないんだもん…!友達の頼みだから仕方なく…』

と、ウルウルと瞳に涙を浮かべるこの人物。

西園寺莉乃、私の実の母親だ。

見た目は、20代後半くらいに見えるが実年齢は43歳。

そして、本当にどうしようもないくらいのお人好しで常識がない彼女。

以前は、知らない人から運気が良くなると勧められた数十万の壺を買い、オレオレ詐欺にも騙されそうになったことがある。


その時は、どちらも私が早急に気づいたことで事なきを得たのだが…。


『もう…!どうして私に言わないの!?いつも言ってるでしょ!?簡単に印鑑とサインをしないようにって…!どうすんのよ、一千万なんて大金…』


『ご、ごめんね…。琴乃ちゃん。お母さん、頑張って働いて返すから…ね?』


『お母さん…現実的な話だけど、お母さんの給料だと借金の利子分にしかならないよ…』


お母さんは、近くのスーパーでパートとして品出しやらレジ打ちの仕事をしてはいるが…一千万なんて大金をパートの仕事だけで稼げるわけもない。


『そ、そんな…』


愕然とする母親の表情を見た瞬間、私は決意した。


こりゃ、高校辞めて私も働くしかないかな…。と。