我ながらナイスアイデアだと心の中で思っていると、呆れたような表情で私を見る侑也は盛大にため息をこぼした。

「あのさ…一応僕は、当主様から君のこと任された立場なんだよ。だから、会って数時間でペア解消だなんて僕の経歴に傷がつくようなことやめてくれる?てか、君もっと感謝したら?西園寺グループの権威があってこそだよ、僕クラスの執事見習いがつくなんて」

…はぁ?どんだけ偉そうなのよこの性悪男!

そんな彼の傲慢な態度に私は開いた口が塞がらない。

苛立ちからついつい拳を握りしめる私に対し。

「それに君のことは嫌いだけど、執事としての業務は完璧にこなすつもりだから安心していいよ?」

と、言い放つ侑也にとうとう堪忍袋の緒が切れた。

「ふざけないで…!私は別に優秀な執事なんかじゃなくてもいいの。とりあえず櫻乃学園を無事に卒業できれば成績だってそこそことれてればいいし。どちらかといえば平穏に…普通に学園生活を過ごしたいだけ」

つい口調が荒くなるも、私は至って真剣に声を上げる。


「…ったく、本当にわかってないね。櫻乃学園に転入してきた時点で普通の学園生活過ごせると思ってんの?悪いけどここはそんな甘くないから。ランクと家柄がものを言うんだ。…君も西園寺の名前背負ってるってこと肝に銘じとくことだね。僕も君が西園寺である限りはサポートするつもりだし」

やれやれと肩を竦めつつ、侑也はリビングにあるソファに腰を下ろした。

「とりあえず…明日からの学園生活せいぜい僕の足を引っ張らない程度には頑張ってもらうよ?」

侑也の脅しのような言葉に少しずつ抱いていた不安が増していくのを感じる。

…私、本当にこの悪魔みたいな執事見習いと上手くやっていけるのかな?

私は内心そう思いつつ、小さく肩を落としたのだった。