はやく俺のこと好きになってよ、先輩。



「出ないで」


隣に視線を移すと、一ノ瀬くんが真剣な眼差しで私を見ていた。


もしかして、画面見えてた?


そうだとしたら、やっぱり一ノ瀬くんは・・・


ひとり考えを巡らせていると、諦めたかのように着信も途絶えた。


それにハッとして画面を見ると、"不在着信 1件"と表示されていた。


「ごめん、画面見えた。・・・今は、俺といるから・・・・・・出て欲しくなかった」


一ノ瀬くんは掴んでいた手をゆっくり離すと、正面を向き直し視線を下へ落とした。


この反応からして、一ノ瀬くんはやっぱり、私とりっくんの関係を知ってるってことだよね。ただの先輩後輩じゃなくて。


「私がりっく・・・朝比奈先輩と付き合ってたこと、一ノ瀬くんは知ってたの?」


そう尋ねると、一ノ瀬くんは頷いて、バイト先で見かけた時のことを話してくれた。


「・・・そうだったんだね。ごめんね、私覚えてなくて。じゃあ、・・・別れた時の事とかも知ってたりする?」


「あー、時期だけはなんとなく。詳しくは知らないけど」


「そっか・・・」


一ノ瀬くんとりっくんがどの程度の関係性なのかよくわからないけど、りっくんも詳しく話したりはしてないんだろうなと思った。