はやく俺のこと好きになってよ、先輩。



「マジ?よかった。俺もすげー楽しかった。あすか先輩の色んな顔見れたし」


「色んな顔って、なんかちょっと嫌なんだけど」


「負けて悔しがってるとことか、怒ったとことか、嬉しそうに笑った顔とか、全部可愛かった」


「っ・・・」


不意打ちで来る一ノ瀬くんの"可愛い"に毎回どう反応していいかわからない。


素直に受け取って、ありがとうって可愛く返せたらいいのに。


私には到底無理そうだった。
 

♪〜


その時、私のスマホから着信を知らせる音が鳴り出した。


スマホを出して画面を確認すると、しばらく見ていなかった名前が表示されていて、ドクッと心臓が脈打った。



"朝比奈先輩"


付き合う前に連絡先を交換した時に登録したままの表示。付き合ってからもずっと変えていなかった。


別れてから連絡を取ったことはなかったけど、連絡先は消せずに残したままにしていた。


急に電話なんて、どうしたんだろう・・・


今日会ったから?


何か話そうとしてたのかな・・・


色んな考えが頭を巡るけど、どうすることもできずに画面を見つめる。


鳴り続ける着信音に、どうしようかと左手を彷徨わせた時、パシッっと左手首を掴まれた。