明華先輩はそこに佇んだまま、いつかバイト先で見たあの表情をしていた。
ん?なんでまたそんな顔・・・
幸せなんじゃねぇの?
そんなことを思っていると明華先輩は屋上から出て行った。
それから、度々同じ告白現場に遭遇し、その度になぜか明華先輩が気になって様子を見ていたけど、いつも同じ顔をしていて。
毎回断る文言は、彼氏がいるからじゃなくて、『好きな人がいるから』だった。
俺はそれがずっと引っかかっていて、でも、ある日、その理由を知ることになる。
久しぶりにバイトで朝比奈さんとシフトが被った日だった。
バイトが終わってスタッフルームに戻ると、椅子にだらりと座っている朝比奈さんにオーナーが声をかけている現場に遭遇した。
「いい加減元気だせよ、朝比奈。お前ならすぐ次見つかるだろ?」
そう言ってコーヒーの入ったカップをテーブルに置くオーナー。
「・・・・・・」
朝比奈さんは無言で俯いたままだった。
まさか・・・・・・、別れたのか?
「え、別れたんすか?」
俺はとぼけたフリをして聞いていた。
「おい、一ノ瀬、ったくお前デリカシーないな。察しろよ。いいからさっさと気をつけて帰れ」
オーナーの言葉で確信に変わった。


