はやく俺のこと好きになってよ、先輩。



初めて見た時、さすがイケメンは可愛い彼女連れてんなーくらいに思ってた。


朝比奈 利空(りく)さんは、男の俺から見てもカッコいい。大学生だし、背も高いし、爽やかだし、客の中にも朝比奈さん目当てで来る人も多かった。


店の奥に入っていく朝比奈さんを笑顔で見送った彼女は、朝比奈さんがいなくなると、窓の外に視線を移し、口角は少し上がったまま悲しそうな表情をしていた。


そんな彼女が気になって、しばらく目が逸らせず突っ立っていたが、お客さんに呼ばれて我に返り、すぐ仕事に戻った。


それが、初めて俺が一方的に明華先輩を知った日だった。



それからしばらく経って、9月下旬の暑さが少し和らいできた頃、俺は屋上の日陰で昼寝をしていた。


「ーーーー嬉しいけど、ごめんなさい。好きな人がいるので」


そんな声が聞こえてきて、体を起こし壁の影から少し覗くと、明華先輩がそこにいた。


どうやら、明華先輩が告白されたらしく、断られた相手は屋上から出て行った。


そりゃ彼氏がいるんだから断るよな。


そう思って俺はまた横になろうとしたけど、聞こえてきた彼女のため息にその動きを止めた。