後ろから呼ばれて、振り返る。同時に一ノ瀬くんも足を止めた。
「ふたり・・・付き合ってるの?」
その言葉に私はツバをゴクっと飲み込んだ。
「俺が必死に口説いてる最中なんすよ。だからもう行きますね。バイト頑張ってください」
私が返事するよりも先に一ノ瀬くんが答えた。私は言葉を発する間もなく、手を引かれてその場を後にした。
頭がショートしちゃったのかな、思考が停止している。
最後に見た、りっくんの顔が頭に焼き付いている。ただ真っ直ぐ私を見ていた。
私の左手は今もぎゅっと握られたままで、一ノ瀬くんは歩くスピードを緩めない。
どうしたんだろう・・・
少し前を歩く背中から感じる雰囲気に、しばらく声をかけられずにいると、いつのまにか映画館に着いていた。


