肩から斜めに掛けているバッグのチェーンを握りしめ俯き、自分の足元を見ていた。
店先のガーデンアプローチの前はすぐ歩道で、常に人が行き交っている。
その中からこっちに向かう足音がして、お客さんが来たのかと、もう少し端に寄ろうとして顔を上げた。
「・・・・・・あすか?」
「・・・・・・りっくん・・・」
目の前の彼を見て固まる。
まさかの、まさかが起きてしまった。
どうして・・・・・・どう、しよう・・・
バッグのチェーンをぎゅっと握りしめると、彼が先に口を開いた。
「なんでここに・・・もしかして、オレにーーー」
「ごめん!あすかせんぱ・・・・・・」
彼の言葉を遮るかのように、一ノ瀬くんが店から出て来た。
一ノ瀬くんも私の前に立つ彼を見て、その場に立ち止まる。
「・・・朝比奈さん、お疲れ様です。今日休みじゃなかったんすか」
「あぁ、休みが出て代打で来た。遥斗はどうしたの?」
「俺はちょっと忘れ物取りに・・・。あすか先輩ごめん、待たせて。行こっか」
そう言って一ノ瀬くんは、私のところまで来ると、私の左手を掴んで歩きだした。
「ぁ、あすか!」


