はやく俺のこと好きになってよ、先輩。



店を出て、映画館へ向かって歩く。


「あ、先輩。ちょっとバイト先寄ってもいいすか?忘れ物あって、すぐそこなんすけど」


「あ、うん。全然いいよ」


この辺がバイト先・・・、なんか懐かしいな。


最初はそう思っていたのに、一ノ瀬くんが進んで行くに連れて、自分の顔がこわばっていくのがわかった。



「ここです。ちょっと待っててもらっていいすか?」


「・・・あ、うん・・・いってらっしゃい・・・」


私が返事したのを聞いて、彼は店内へ入っていった。


ドクドクドクドク・・・


自分の心臓の音がやけに大きく感じる。


目の前にあるのは、カルフォルニアテイストのバーガーショップ。


ここに来たのは初めてじゃない。


まさか、一ノ瀬くんもここでバイトしてるなんて・・・。


まだここで働いてたりする?さすがにもう辞めてるかな。


いや、まだ働いてたとしても、今日会うなんてまさかそんな偶然はないよね。


うん、そうだよ。


そう自分に言い聞かせて、でも一応店内から見えない位置に移動し、一ノ瀬くんを待つことにした。