パシッ
バトンを受け取ると何もかも忘れ、無我夢中で走る。
「あすかー!」
「あすかちゃーん!!」
仁乃やみんなの声援が聞こえた。
ハァ、ハァッ
後ろからのプレッシャーを感じることなく、アンカーの男子にバトンを渡した。
バトンを渡す前にチラッと見た一ノ瀬くんは、私を見ていて余裕そうな笑みを浮かべていた。
3年のアンカーがグラウンドの4分の1を通過したところで、2年と1年のアンカーにもバトンが渡った。
「キャーッ!!」
「一ノ瀬くーん!がんばれー!」
一気に黄色い声援に変わったかと思うと、一ノ瀬くんはぐんぐんスピードを上げていく。
3年が半周過ぎた時には、数メール後ろまで迫っていた。


