「・・・好き」
スーッと、ポニーテールに指を通された。
私はその場に固まったまま、ひとり顔を真っ赤に染めていた。
「あすか先輩、かーわい」
前に向き直し、小声でそう言いながら口角を上げている彼はすごく余裕そうで。
ドキドキドキドキ・・・
一ノ瀬くんの低い声で囁かれた「好き」の二文字がまだ脳内に響いている。
ああ〜もうっ、反則、反則だよっ。
何もしなくなったと思ったら、急にこんな攻めてきて。
パタパタと手で顔を扇ぎ、暴れる心臓を落ち着かせるのに必死だった。
そんな私たちを、グラウンドの端から見ていた人がいたことに私は気づかなかった。


