「・・・好きな人っていうより、忘れられない人。・・・だから付き合うことはない」 この子に適当に返しても納得しなさそうだし、どうせもう関わることもないだろうから本当のことを言って、さっさと切り上げようと思った。 「・・・ふーん、てことは、元カレか」 「そういうことになるね。じゃ、もう行くから」 別に言いふらされようと問題はない。 もう用はないし、この全部を見透かされそうな瞳から早く逃げ出したかった。 彼の横を通って、扉に向かって歩き出したその時、 ぎゅっと右腕を掴まれた。