「キャーッ!すごいっやばいっ、えっ、どうしよう!明華!」


「ちょっと、にの!落ち着いて!声大きいってば」


朝登校してすぐ仁乃に捕まり、昨日の帰り道での出来事を話したところだ。


仁乃は口元を両手で覆いながら、バタバタと足踏みしている。


「落ち着いてられないよっ。まさか告白されたなんて〜!一ノ瀬くんやるぅー。で、明華、どうするの?」


仁乃は興奮を抑えきれない様子。


「今日さ、ちゃんと断ろうと思ってる。昨日は、なんか言えなかったから」


ちゃんとごめんなさいって言わなきゃ。


一ノ瀬くんはモテるんだし、私に時間を使うなんて勿体ない。


私はしばらく恋愛する気はないのだから。


そもそも接点もないのに、私のどこを好きになったんだか。


「あすかぁ〜。もしかしたら、明華もまた恋できるかもよ?そんなグイグイ来てくれる子、なかなかいないし、良いと思うんだけどなー」


机に頬杖をついて、少し不満そうな仁乃。


「・・・にの、ありがとうね。でも、まだいいかな」


過去の恋愛を引きずっている私を、いつも見守ってくれている仁乃。


そんな彼女を安心させたい気持ちはもちろんあるけど、まだ私の心は動きそうにもなかった。