「はい、どうぞ。大好物」
「あ、ありがとう」
目の前に差し出されたたこ焼きをひとつ、口の中へ入れた。
ソースたっぷりで美味しいたこ焼き。
いつもだったらしっかり味わうけど、今日はそんな余裕がない。
これからりっくんに話すこともそうだけど、頭の片隅で、三角橋にいるであろう彼のことがチラつく。
だめだ。早く話さなきゃ。
「りっくん、あの・・・」
「もしかして、もう返事してくれようとしてる?せめて、このたこ焼きと唐揚げ食べてからにしない?」
「・・・・・・うん、そうだね」
花火が上がるまで、あと10分くらい。
花火の打ち上げ時間が20分くらい。
ここから三角橋まで歩いて10分はかかる。しかも今日は浴衣だし、下駄だし、この人混みだし・・・・・・間に合うかな・・・。
そんなことを考えながら唐揚げとたこ焼き
を口に運んでいく。
りっくんもしばらく無言で食べていた。
私の持っていた唐揚げのカップは空っぽに、りっくんの手元のたこ焼きはラスト1個になった。
「・・・明華、食べる?」
りっくんがいつもの優しい笑顔で私に差し出す。
「ううん、りっくん食べていいよ」
「そう?・・・じゃあオレ、ずっと食べないよ?まだ明華といたいから」
りっくんはどこか寂しそうに笑った。
「・・・ごめん。困らせたいわけじゃないんだ。明華が食べてくれる?ちゃんと返事聞くから」
そう言って差し出された、最後の1個。
「・・・じゃあ、いただくね。ありがとう」
たこ焼きを食べ終えた私は、りっくんへ自分の気持ちを伝えた。


