「っ・・・」


唇に温かくて柔らかい感触。


身動きが取れず、数秒、いやどれくらい経ったか。それはゆっくりと離れていった。


唖然としたまま目の前の顔に焦点を合わせると、形の良い唇は優しく弧を描いた。


「今は、これで我慢する。でも次は・・・ね」


一ノ瀬くんは平気な様子で穏やかな笑みを浮かべている。


状況を理解すると、ボッと顔が熱くなった。


「・・・な、何言って・・・」


キスは初めてじゃないのに、これでもかってくらい動揺している。


「嫌われてないなら、攻め続けるよ。だって先輩、俺のこと、好きでしょ?」


なんとも思ってない人から言われると不快でしかない自己中ナルシスト発言も、好きな人に見つめられて言われると、胸が痛くなるほどドキドキと加速する。



「だから、早く俺のこと好きって言ってよ?先輩」