「っちょっと、離して」
「嫌です。あすか先輩がもっとペース落としてくれたら離します」
私の右腕を掴んでいる手はスルッと下へ降りて、今度は私の手をぎゅっと握った。
「っ!わわかったから、ほら、離して」
私はおとなしく歩くペースを落とした。
んもーなんなのこいつ〜っ!
「フッ、ありがとうございます。あ、でも手繋いだまま、駅まで早歩きってのも良かったかも」
「全然良くない」
間髪入れずに反論する私を見て、楽しそうに口元を緩ませる彼。
その顔に不覚にもちょっとドキッとした。
いやいや、顔が良いからね、自然現象だよ。無駄に整いすぎなんだよ。うん。
「一ノ瀬くん、今日だけだよね?からかってるなら、本当にもう私に関わるのやめて欲しい」


