はやく俺のこと好きになってよ、先輩。



ん?


待って。


はると・・・?


さっきの黄色い声を思い出して、群れの横を通り過ぎようとした時だった。




「あすかせーんぱいっ」




げっ。


気づいた時には遅かったらしい。


群れの中から聞こえたその声は「ちょっとごめんねー」と言いながら群れを上手に抜け、私の前に来た。



「一ノ瀬、遥斗・・・」


「お、嬉しー。名前覚えてくれたんすね」


バッグを肩に掛け、両手をズボンのポケットに入れて立っている彼は嬉しそうに笑った。


「なに?」


そう返した私の顔は、彼の顔とは正反対に引き攣っていると思われる。


「あすか先輩と一緒に帰りたくて、待ってました」


きゃっと、私の横で今まで黙って目をキラキラさせていた仁乃が声をあげた。