放課後。


昇降口を出ると、一ノ瀬くんがいた。


相変わらず数人の女子に囲まれていたけど、私に気づくと、女の子たちに何か言ってこっちへ来た。


その姿を見ると、少し嬉しかったり。


「相変わらずモテモテだね」


一ノ瀬くんを前に、皮肉めいたことしか言えない自分が嫌になる。


「あ、もしかして、妬いた?」


「ち違う。妬いてない」


一ノ瀬くんを見つけた時のモヤっと感は瞬時になかったことにした。


「フッ。好きな人にモテないと意味ないよ、ね?先輩」


隣を歩く一ノ瀬くんは、そう言って私を覗き込むように首を傾げた。


「そ、そうだねっ」


目が合わせられず、一ノ瀬くんとは逆の方向に視線を流した。


なんか・・・昨日の帰り際の一ノ瀬くんとは別人なんだけど。


まあ、こっちがいつもの一ノ瀬くんと言われればそうだけど・・・。昨日の彼の方が珍しいのか。



え、昨日の事って、夢じゃないよね?


真剣な一ノ瀬くんも、ちょっと弱さを見せた一ノ瀬くんも・・・好きだって言ってくれた一ノ瀬くんも、ちゃんと実在してたよね?


急にそう不安になるくらい、ケロっとしている彼。