不意に壊してしまったメガネの件は悪いと思いつつも、その反面素顔が見放題になった。
……そう、あんなに切実に願っていた事が叶って、本当に本当に嬉しいんだけど。
「弘崎くん、因数分解がよく分からないから教えてくれない?」
「いいよ。えーっと、これは……」
「ねぇ、弘崎くん。私はこの英文の翻訳がわからないんだけど聞いてもいい?」
「どこがわかんないの? 見せて」
そのお陰でライバルが激増した。
つい先日、休み時間の度にウロつくなと釘を刺されたばかりだけど、懲りずに会いに来てしまった。
扉の奥から遠目で中を覗き見すると、メスどもがノートや教科書を持って拓真の周りにわんさか群がっている。
浅はかだった。
自らの失態により0人だったはずのライバルは両手で数えきれないほど。
拓真との恋は更に苦戦を強いられる事に。
身を潜めながら群がるメスどもを一人一人目でなぞっていくと、自分と同じくハンターの目をしている。
そうとも知らない拓真はバカ正直に質問に答えている。
だから、その光景が余計憎くて仕方ない。
拓真、お願い気付いて。
あんたを取り囲んでいるメスどもは、勉強するフリをしてるだけで話を聞いちゃいないよ。
その上、性根腐ってるし、気を引く為にぶりっ子をして存在感をアピールしてるだけ。
普段私にしているように、無視したり放ったらかしていいの。
デレは無駄だし要らないのよ。
ピンチな時に限って接近禁止の身。
本当は、今すぐに輪の中に乱入してメスどもをひっぺがしてやりたい。



