和葉はナポリタンに目線を当てたまま、「いただきます」と手を合わせた。
ピーマン、玉ねぎ、ウィンナーと、野菜がたっぷり入ってるスパゲティは、ケチャップの味が絶妙にスパゲティと絡み合っていてとても美味しい。
これが、私の知らない温かい家庭の味。
和葉はお婆さんの手作り料理が美味しくて、スパゲティを口に運ぶ手が止まらない。
和葉「これ、めっちゃウマいじゃん! ナポレオンだっけ? この味超好きなんだけど」
拓真「さっき俺が二回もナポリタンだって言っただろ? お前は人が言った事に関して忘れっぼいな」
お婆さん「喜んでもらえてよかった。野菜はうちの畑で採れた無農薬のものを使っているんだよ」
和葉「へぇ、採れたての野菜ってこんなに美味しいんだ」
拓真「好き嫌いしないで残さず食えよ。そんなに男みたいにガッツいて食わないで上品にな」
和葉「もー、拓真ったら。和葉は子供じゃないよ」
お婆さん「うふふ……」
拓真は余計な小言が多くて、どっちが年上かわからなくなるほど子供扱いしてくる。
本当は、立場が逆転するのを切実に願ってるのにさ。
午前中の農作業で体力を使ってお腹が空いていたせいか、スパゲティをあっと言う間に平らげた。
「ごちそうさまでした! あー、美味しかったぁ」
「食い終わるのがやけに早くない? よく噛んだ? スパゲティが喉から胃まで繋がってないだろうな」
「だから、子供じゃないってばぁ」
仲良く言い争う二人を見届けたお婆さんは、完食したお皿をまとめて台所へ行った。
和葉は腹が満たされると、朝早くから農作業して疲れと、食後で体温が上がった事が重なって眠気が襲いかかった。
「あ〜ぁ。お腹いっぱいになったから、拓真の部屋でお昼寝したくなっちゃったよ」
うーんと高く腕を上げて伸びをしながら冗談をこぼした瞬間、拓真から殺意ある目が向けられた。
黒髪に染まったあの日からここでお昼寝をしようとは一切思わないけど、こんな小さな冗談で睨みつけるくらい布団の件を根に持ってるんだろう。



