まさか、このプレゼントは先週金髪を奪った詫びの品?
これで、黒髪にした件をチャラにしようとしている?
そんなぁ……。
あの時は座敷童子ヘアーに変身した自分に驚いて黙っていたけど、金品とかでいざこざを解決するような女じゃないんだけど。
でも、金髪はもう返ってこない。
お婆さんがどうしてもプレゼントしたいと言うのなら仕方ない。
そこまで渡したいと言うのなら、受け取ってあげてもいいけど……。
和葉は頭の中で様々な葛藤を繰り返したが、お婆さんの気持ちを汲んでプレゼントを受け取る事に。
「この風呂敷の中には何が入ってるの?」
「まぁまぁ、遠慮なく中を開けてご覧なさい」
中身について触れないお婆さん。
中身を見た時の反応が試されているのだろうか。
大事な金髪を奪った詫びのつもりなら、相当高価なものに違いない。
もしかして、弘崎家代々受け継がれている宝石とか?
でも、風呂敷の大きさはティッシュの箱を横に二つ並べたくらいの大きさだからサイズ感が違うなぁ。
ひょっとしたら、自家栽培の野菜?
それにしては重量が軽すぎる気がするし。
風呂敷を軽く振ったり揉んでみたりして、いろんな妄想を繰り広げてみたけど、結局判明しなかったので素直に開く事に。
しかし、目を凝らしても風呂敷の中には何も入っていない。
まさかの期待外れに。
「あの……、お婆さん。風呂敷の中には何も入ってないんだけど」
「いいえ、よくご覧になって」
お婆さんの言う通り、パチパチと二回まばたきをした後、眉を上げて風呂敷の中央に焦点を当ててみると、風呂敷の中央が立体的に膨らんでいる。
まさかのマトリョーシカ状態?
これかなと思い、その立体物を手に取って、布の端と端を持って大きく広げてみた。
「和葉ちゃんの事を思って拵えてみたの。気に入ってもらえるといいけど……」
布の上から下へと目線を滑らせた和葉は、衝撃的な品にびっくりして思わず二度見した。
これは……。
お詫びの品ではない。
唐草模様の布を広げた瞬間から、お婆さんは金髪への謝意がない事を知った。
そもそも、私が金髪を失ってショックを受けていた事を知らないのかもしれない。
中に入っていたのは、お婆さんお手製の唐草模様のモンペ。
先日の農作業のお礼だけでなく、これからも引き続き手伝ってくれと言わんばかりの報酬と知る。
唐草模様の風呂敷の中には、唐草模様のモンペ。
つまり、『唐草 in 唐草』。
風呂敷を開けた瞬間、唐草模様が少し立体的に見えただけで、一瞬中に何が入っているか分からなかった。
しかも、風呂敷は無駄にリバーシブル。
家にどれだけこの布が余ってるのかしら。
泥棒じゃないんだから、今どき唐草模様はないでしょ。



